残念ながら、M&Aは、相手がいる話であって、成約を本気で目指したからといって、満足のいく相手が見つかり合意に至る保証はなく、苦労の末に希望の星が見つかっても途中で破談となり、M&A会社売却がとん挫するケースは存在します。
特に、売却案件を集めるだけ集めることで、買い手候補(つまり真の顧客)を開拓でき、情報提供料等の名目で買い手候補から報酬を得られる立場にある両手タイプのM&A助言会社に依頼すると、破談確率(成約失敗確率)は高くなる傾向にあります(片手タイプでも成約率が低いM&A助言会社はいますが)。
M&A取引の当事者には、基本的に売り手と買い手の2者がいるため、いずれかが「この取引を実行したくない」と思ったら、破談となるわけです。
買い手からの破談申し出は、次の2パターンに集約されると思います。
1つめは、買い手がDDした結果、ネガティブな事実が当初想定以上に多く発見され、価格調整以前に「買うべきではない」と判断されてしまったり、価格調整を売り手に打診したものの「満足できる調整に至らない」場合、投入した時間・労力・お金は無駄になるものの、実行しない方が合理的と判断されてしまえば、破談になるでしょう。つまり、DD前の情報開示が不完全・欠陥だらけであると、売り手は破談を突き付けられてしまう確率が高まるということです。これは、情報開示を怠けた、情報開示資料を準備する能力の不足するM&A助言会社(と情報開示に非協力的な売り手)の責任であり、買い手は被害者と言えるでしょう。
2つめは、買い手側の事情が変わってしまった場合です。つまり、交渉期間中に買い手側の経営状態や組織体制の変化により、M&Aする余裕がなくなってしまった等の場合です。これは、 売り手に責任はありません。予見可能な状態でなければ、M&A助言会社にも責任はないと言えるでしょう。予見可能な状態であったら、M&Aできなくなる確率が高い買い手候補を連れてきたM&A助言会社の責任です。
一方、売り手からの破談の申し出は、次の2パターンに集約されると思います。
1つめは、M&A助言会社から当初聞いていた話と、実際の交渉の内容に乖離が大きすぎて、売却条件を飲めないケースです。これは、案件受託に焦り、本当の事を説明しなかった、もしくはM&A交渉の結果を予測する能力が低い、M&A助言会社の責任であり、売り手の責任ではありません。
2つめは、売り手の事情が変わり、売却の意思がなくなった場合です。つまり、何らかの理由で会社を売却しようと、M&A助言会社に声をかけ、サポートを受けていながら、業績が良くなって売るのがもったいなくなったとか、逆に売り手オーナー社長の経営意欲が低下したのを反映して進行期実績が悪化し取引条件も相応に悪化した結果、合意できる下限を下回ったとか、のケースです。これは、売り手の責任であり、買い手やM&A助言会社は被害者です。
このように破談にも色々なシチュエーションがありえますが、破談という取引当事者に多大なる負担感だけが残る事態に陥らせてしまったのは、やはり、M&AのプロであるM&A助言会社に手落ちがあった可能性は高いと言えるでしょう。
どのような落とし穴がM&Aに存在するのか、落とし穴を避けてくれそうなM&A助言会社はどんな条件を見たすのか、について、売り手は知っておくとよいでしょう。下の記事を読んでいただければ、典型的な落とし穴について知識武装できるはずです。