Knowledge

山頂への道標

TOP

→

山頂への道標

→

「管理タイプ」のオーナー社長がM&Aで会社を売却する際に気を付けるべき3つのこと

2018/6/22

M&A会社売却時の心構え

「管理タイプ」のオーナー社長がM&Aで会社を売却する際に気を付けるべき3つのこと

M&Aにおける最重要テーマの「経営者」に関する議論をしてみたいと思います。

まず、経営者のスタイルというかタイプを無理やりですが、3タイプに分類してみましょう。

まず最初の2つは、創業者に多い「開発タイプ」と「営業タイプ」です。
残る1つは、2代目以降安定期以降の生え抜きや外部からの参画経営者に多い「管理タイプ」です。

やはり、ご自身で創業し、M&Aで会社を売却できるクラスにまで会社を成長させる手腕のある経営者は、「開発」か「営業」の少なくともどちらかで特に秀でた力をお持ちの方が多いと思います。また、一方で、創業期、成長期を過ぎ、安定期以降にある会社の経営を引き継ぐ経営者は、すでに確立された経営体制があり、必要な人的リソースもそろっているケースがあるので、「開発」、「営業」よりも「管理」が得意という経営者も増えてくるのだと思います。

管理タイプの経営者は、創業家の二代目以降など、家督として経営を引き継ぐケースも多いと思います。特に、希望していない事業承継によって経営者になってしまった方は、一刻も早く、心の底からの「経営者としてのやりがい」を見つけるか、もしくは、将来のマイナスを避けるために「様々な選択肢」を検討しておくべきでしょう。M&Aはその選択肢の1つになると思います。

ご自身がどのタイプに属するかを自己評価してみてください。すべてのオーナー社長は3種類のどれかに大きく偏っています。万能型のオーナー社長はそうはいません。

今回は「管理タイプ」のオーナー社長がM&Aによる会社売却を検討する際に気を付けるべきポイントのうち特に重要な視点を3つご紹介したいと思います。

売却前の準備内容

管理タイプ」の社長は、特別にとがった社長でなくとも経営ができる経営基盤を持っているがゆえに、M&Aにおける最大の売り物が、ビジネスモデルや会社としての総合力である可能性が高いですし、差別化に不可欠な開発力商品開発の仕組み作り、環境変化への耐久力外注費の使い方も優れている可能性も期待できます。非常に多くのケースがありえるため、社長が管理タイプの場合には、どこの強みがあり、どこに弱みがあるのかについて、外部第三者の目を利用して、慎重に見極める必要性が高いケースとなります。

隠れた財宝が、(現場を細かく知らないでも済む)社長と会って話を伺った時点では見つからず、他の(現場をよく知る)役員との情報交換や詳細情報を分析した後から見つかるケースもありますので、事前・事後の改善余地についても柔軟に検討することが重要となるケースでもあります。社長が得意な分野は「マネジメント(部下の管理)」であり、特に優秀な部下がいるケースでは、社長としては苦労しないで済む一方、M&A的、つまり、「外部事業体とのリアルな事業統合による価値創造」をどうやって最大化するかという観点からすると、”社長が、自分の会社なのに細かい点では知識不足”というケースが意外と多くあるものです。大きくて立派、古くからある老舗と呼ばれる会社ほど、無理をしなくても資金繰りの心配をしないでよいので、社長は現場知識を頻繁にアップデートしなくてよい、改善すべきポイントを無理に考えなくてよい、という状態になりやすいのです。

マネジメントタイプの経営者である、つまり、開発力や営業力に特別に秀でた経営者ではないという点が、逆にM&A的にはプラスとなる面もあります。

つまり、「仮にM&Aの後で引退されたとしても、バイサイド(買い手)が大きな不安を抱えないで済む」、言い換えると、「現経営者がいなくなってしまった場合のリスク」を過大に見積もらずに済む点です。結果として、リスクが小さくて済むので、売却価格を高めに交渉しやすくなるということでもあります。

安定したキャッシュフローがあるのであれば、LBO(レバレッジド・バイアウト)を利用した投資ファンドへの売却等も検討してもらいやすい点で、M&Aの選択肢が広がります。M&Aならではの現象ではないでしょうか?

M&Aでの選択肢が広がるのであれば、それらの選択肢が、単なる可能性ではなく、具体的に実現できる状態にしておく、その実現を妨げる要素を取り除いておくことが必要となります。あくまでもケースバイケースになりますので、老練なM&Aバンカーとしっかり相談して、M&A戦略を練りこみ、必要な準備をしておくべきです。

売却相手の選び方

開発タイプ」の経営者が経営しているターゲット企業は、千差万別のシチュエーションが想定されます。

ターゲット企業のM&A市場内でのポジションを正確に把握しましょう。

相手選びにおいても、同業、川上、川下、周辺、関連、非関連と様々な関連性の事業会社を選択肢に入れ、さらに、海外企業、投資ファンドなども積極的に検討するとよいでしょう。

投資ファンドはLBOという金融技術を利用して、安定した企業に投資し、必要な投資利回りを獲得する場合がありますが、LBOが実行できる案件になりますと、期待できる売却価格も想定外に高くすることができるケースも増えてきます。

海外企業へ売却するケースでは、マーケット(日本か海外)、商品(自社商品か相手商品)が異なるので、ピタリとはまれば果てしないシナジーが生ずる可能性もあります。柔軟に検討しましょう。

適したM&A助言会社の選び方

ターゲット企業の経営者が「管理タイプ」に当てはまる場合、かつ、一定以上の事業規模(経常的EBITDA(一時的費用や過大費用等を調整した後の償却前営業利益)が数億円以上)の場合には、事前準備最適な相手選びによって、とてつもない価格差が生じる可能性があります。
会社売却の成功のために必要と思われるサポートを具体的に実行する能力のあるM&A助言会社、担当者であるM&Aバンカーを選んでM&A交渉に臨むべきです。
M&Aのマッチング活動だけではなく、銀行内での融資の意思決定上のキーポイントに関する知識、税務・法律・会計を駆使したM&Aスキル、さまざまな関係者に誤解なく深く理解してもらうための資料作成能力、あらゆる方向から角度をついて飛んでくる各ステークホルダーからの要求への対応力など、プロのM&Aバンカーを選んで依頼することが重要となります。

いわゆる両手業者よりも、片手のM&Aバンカーにしっかりと取り組んでもらうと成功しやすいでしょう。さまざまな可能性があるため、M&Aとしての選択肢も多数あり、それを実現させるためには多くの関係者も登場するので、M&A助言の経験者(できればマッチング営業中心ではなく伝統的投資銀行としてのM&Aバンカー)であるだけではなく、事業会社での経験専門家としての経験金融マンとしての経験などを組み合わせながら、複雑かつハードな交渉をやり切ることができなければ、可能性は途中で萎んでしまうことになるからです。