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セルサイドM&Aアドバイザーは、サラリーマンではなく独立経営者から選ぶべし

2018/1/30

M&Aのチーム管理

セルサイドM&Aアドバイザーは、サラリーマンではなく独立経営者から選ぶべし

セルサイドオーナー(売り手)がM&Aで会社を売却する際、できるだけ優秀なM&Aアドバイザー、つまり、「覚悟」と「能力」を兼ね備えたM&Aアドバイザーを雇うべきです。サラリーマンM&Aアドバイザーが多い中、どういうポイントを気にするべきでしょうか?

まず、セルサイドオーナーとしては、M&Aアドバイザーが、セルサイドオーナーの今までの人生の集大成を、もっとも望ましいカタチとして結実させ、ターゲット企業(売り手企業)の将来の可能性ターゲット企業の役員・従業員の今後を左右するという非常に重たい責務を「覚悟」をもって全うしてくれないと困ります。

また、セルサイドのニーズに則したM&Aターゲット企業の可能性を最大限引き出すM&Aを実現させるために必要不可欠な専門知識や経験、つまり「能力」が不足していても困りますね。M&A助言は、相手を探すだけではありません。事業・組織・会計・税務・法務・不動産等、さまざまな専門知識に加え、自分が当事者となった現場経験、有能なバイサイド(買い手)とのネットワークがなければ、最適な条件を入手するための創案交渉はできません。

その観点からすると「サラリーマンではオーナー社長の相棒として、あらゆる経験が不足していて、頼りないのでは?」という懸念を持つのは当然です。

では、「覚悟」と「能力」の両方を併せ持つM&AアドバイザーとはどのようなM&Aアドバイザーでしょうか?

独立経験があるM&Aアドバイザーであり、かつ、M&Aの専門家としての修行も積んだM&Aアドバイザーが大正解となります。

サラリーマンM&Aアドバイザー

サラリーマンM&Aアドバイザーは、大きく2つのタイプに分かれます。1つは、通勤していれば潤沢な固定給が貰える高度専門家タイプ。もう1つは、業績連動賞与の割合が高い活動量重視の営業マンタイプです。

1.高度専門家サラリーマンM&Aアドバイザー

前者は、主に大手金融機関独立系M&Aハウス(常時片手報酬タイプに限る)等で働いているサラリーマンです。高額の固定給に加え、巨大案件を成功させれば賞与にも少し反映されます。このような巨大案件向けM&Aアドバイザリー部門で働くための採用条件は非常に厳しく(MBAや公認会計士の資格の他、関連業務の経験等)、「能力」のうち知識の面ではさほど不安を感じさせないでしょう。M&Aバリュエーションについて、DCF法やEBITDA倍率法といった「ちゃんとした評価法」を習得し、有能なバイサイドとのネットワークを構築していますので、公正価値(フェアバリュー)での取引を期待しやすい点が最大のメリットでしょう。しかし、いわゆるエリート知識人なので、必要な「能力」のうち、中小企業M&Aを成功させるために重要な事業の現場経験に乏しく、助言できる範囲は限定的となりがちです。また、「覚悟」の面では、担当者によってピンキリなのが実情です。社内出世競争に関心が偏っていると、セルサイドのために真摯かつ誠実に努力してくれないかもしれません。組織の論理が先に走り、担当者が途中変更になってしまうリスクなどもセルサイドにとっては不安要素です。

2.営業中心サラリーマンM&Aアドバイザー

後者は、主に、営業・賞与偏重のM&A助言業者で働いているサラリーマンです。圧倒的多数がこのタイプになってきています。売上を計上して賞与を貰えなければ生活できないため、常に会社を去るかどうかの崖っぷちで働いています。そのため、「覚悟」を持つ人が大半でしょう。しかし、会社の方針が短期収益重視の場合(件数主義のM&A仲介等)、担当者の「覚悟」はセルサイドのためというよりも、自分のために偏って作用してしまうリスク(顧客との利益相反リスク)があります。本来、中長期的視点から、具体的な企業価値向上のカタチを創造することでのみ、売り手も買い手も満足できるのがM&Aであるところ、過度に短期成約・件数重視に偏ると、力の強い買い手に都合よく、素人でも簡単に計算できる、安値評価法(呼称は様々。「純資産」を利用する評価法は全て短期成約偏重)を利用することが増え、結果としてセルサイドだけが損をするリスク公正価値(フェアバリュー)よりも大幅に安い価格での会社売却に誘導されるリスク)が高まります。また、広範囲かつ高度に専門的なM&A助言関連知識を修得している人が、営業偏重の社風の中で発言力を持つ状況は期待しにくいでしょうから、こういう営業偏重・短期成約ノルマ過大な組織の中では、前述高度専門家タイプほど我慢できなくなって辞めてしまうそうです。人の入れ替わりが激しいのもこのタイプの特徴です。契約前に、担当者の職歴実績について、しっかり確認する中で、「(クライアントのために頑張るという)覚悟能力」が十分かを確認すべきでしょう。

独立経営者M&Aアドバイザー

一般に、高度専門家タイプ(サラリーマン)は大企業向けのM&A助言(投資銀行流の本格的なM&A助言)に従事していますが、営業マンタイプ(サラリーマン)は零細企業に向いたM&A助言(マッチング仲介)に従事していています。前者は、従事した「案件規模や高度な問題解決」を誇り、後者は、従事した案件の「件数」を誇るのが、表に出てくる特徴です。また、前者は、入社条件が非常に厳しく(高度専門性と経験)、後者は、入社条件が緩い(年配者からの好感度等)のも特徴の1つです。

サラリーマンではない独立経営者タイプは、中堅中小企業向き、特に特徴のあるターゲット企業(売り手企業)を売却する際、一番頼りになるM&Aアドバイザーと言えます。このタイプは「成果(他のM&A助言会社による想定売却価格の何倍で売ることに成功したか等)」を誇ります。高度専門家タイプ(サラリーマン)を経たうえで、中堅中小企業への助言スキルを磨き、独立するのが典型パターンです。

独立経営者であるM&Aアドバイザーは、サラリーマンではないため、サラリーマン特有の「甘え」の心配は(通常)なく、さらに、独立前に十分な修行を終えている元投資銀行マン(M&Aバンカー)による独立の場合、「知識・経験不足」の懸念も小さいと思います。

ところで、セルサイドオーナーが欲しいのは、あくまでも、ターゲット企業を売却するために必要な「覚悟」と「能力」のはずです。すべての業種、あらゆるシチュエーションで、高品質なセルサイドM&A助言を遂行できる完璧なM&Aバンカーには、今までに1人も会ったことがありません。やはり得手不得手があるのです。

必ずアイミツを取って、「セルサイドオーナーにとって優秀な」M&Aアドバイザーを選ぶことが重要でしょう。覚悟」と「能力」以外にも「信用(利益相反を排除し、絶対に裏切らない)」や「相性(なんでも相談しやすい)」も重要です。

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